エル・ジャポン創刊35周年であると同時に、ELLE ACTIVE!の前身となるイベント「ELLE WOMAN in SOCIETY」の初開催から10年という節目でもある今年。
「Re:RELATIONSHIP!(深めよう。いい関係でいい未来。)」をテーマに、トークセッションやAR体験などを通して社会課題や人との関わり方をアップデートし、より良い未来に向かって結束することを目的として、本日、6月29日(土)に麻布台ヒルズ ヒルズタワーにて開催された『ELLE ACTIVE!FESTIVAL2024』。
同会場の34階では、最初のトークイベントが行われ、アーティストでCradle代表取締役社長でもあるスプツニ子!さんと、横浜大学客員教授で東京大学大学院理学系研究科特任准教授も務める佐々木成江さんの2名がハースト婦人画報社・ELLEグループの編集局長を務める坂井佳奈子さんと共にご登壇されました。
冒頭で、編集局長の坂井さんより「今回はたくさんのセミナーがあるんですけど、「Re:RELATIONSHIP!」が今回のテーマになります。コロナ禍後、皆さんのライフスタイルが変わったと思います。 人と人とのコミニュケーションが色んな風に変わってきたなという所を改めて感じています。皆さんに様々な角度からお話をさせていただき、聞いていただければと思います。そして、これからの未来を良くするための何かヒントになればいいなと思います。そして皆さんと一緒に未来を作っていければと思います。」 とご挨拶をいただき、イベント全体の趣旨を説明いただきました。
以降は、坂井さんが進行を務め、佐々木さんは「5年くらい前にジェンダード・イノベーションと出会って、日本でそれを進めるための活動をしています。トップバッターという事で、皆さんとジェンダード・イノベーションを考える機会を設けていただいて光栄に思っております。」と、スプツニ子!さんは「様々なAIの話をできればと思います。AIはとても身近なものではありますが、ずっとテクノロジーの世界に多様性があればいいなと思っていて、女性の目線が欠けていて勿体無いなと思っているんですよ。 女性の声がもっと増えた方がいいなと思っていたので、本日はすごい楽しみにしていました。」とご挨拶し、本トークイベントへの意気込みを語りました。
ご挨拶後、早速3名によるトークセッションがスタート。まずは、本トークイベントのキーワードでもある“ジェンダード・イノベーション”について佐々木さんが「ジェンダーは性差に基づくという意味で、イノベーションは知的想像・技術革新という意味になります。2005年にロンダーシービンガー氏が提唱した言葉です。現在、研究や開発の対象が男性に偏ってしまっているという結果があります。そして女性の体のデータが少なくなってしまっているのが大きな問題で、性差分析という新たな視点を入れることで科学や技術の発展やイノベーションをしていこうという考え方になります。」と事例を交えて説明し、スプツニ子!さんが「女性のデータが足りないから、女性のための薬、プロダクトがちゃんと開発されていないという事実も結構あるし、日本は理系を目指す女性が凄く少ない。研究所に女性が少ないと、例えば「つわり」の原因ってようやく最近発見されたんですよ。女性の研究者が発見したんですけど、それまで大した事ないよねみたいな事が起きちゃうのが凄く嫌で(笑)。娘さんがいらっしゃる方はぜひ、将来理系を推してほしいなと、それをお伝えしにきました。」と、説明を受けて、現在の日本の環境を交えての見解を述べました。
ジェンダーバイアスによって、科学技術における開発や研究の分野で 女性のデータが足りないという点について、 日常的にAIを活⽤しているというスプツニ子!は、女性のデータが足りないと感じる具体例を教えてもらえますか?という質問に「女性のデータが足りないから薬の副作⽤が二倍になっちゃうとかいくつか事例はあって、この対策については、データをとらなきゃという部分と、理系の分野に女性を増やさないと、というのを凄く感じています。」とスライド資料を⽤いて具体例を説明し、ChatGptについての質問を観覧者へ投げかけました、会場の反応を聞いた後「AI=プログラミングという考え方はもう違う、LINEを使ってるくらいのイージーさだと思うんです。AIは現在過渡期で、日進月歩で進んでいますがまだパーフェクトではないので、皆さんのデータが必要だし、皆さんをもっと使った方がいいし、男脳、女脳は科学的にはもうないものと解明されているので、ぜひエンカレッジしたいなと思っております。」とAIの使⽤について後押ししました。
この具体例を聞いた佐々木さんは「AIは性別ではなくジェンダーの問題を引きずってしまいます。機械学習をさせるときに既存のデータを使うため、その中でジェンダーバイアスがあるとそれを採⽤してしまいます。なのでもっと女性の情報を蓄積する必要があります。だからもっと皆さんに使っていただいて情報を蓄積させてほしいです。」と女性のデータが足りない現状についてコメントを残しました。トークイベント後半では、実際にDALL·Eという画像⽣成AIを使⽤しながら、AIによる多様な女性象の⽣成をスプツニ子!さんが実演しました。
そして、AIが加速する時代に、私たちはどのようなリスクを認識して向き合っていくべきか、社会はどのように進んでいくべきでしょうか?という坂井さんの問いに対し、佐々木さんは「ジェンダーを考える時に、どうしても自分の経験とか固定概念に囚われてしまいがちなので、データをちゃんと見て客観的に判断して行く事が重要だと思います。差があるか調べること、そしてその差を埋めてあげるという平等ではなく公正な視点が必要で、性別の固定概念を植え付けてしまうのは、それはそれで危険です。男女以外にも、様々な違いの視点を交差させて同時に考えることが必要。そうすれば誰一人取り残さない社会に繋がっていくかなと思うので、皆さんで一緒に変えていきましょう。」と今後の社会の展望について話しました。
スプツニ子!さんは「平等と公平については私も色んな所で話しています。最近、構造的差別という言葉が議論されていて、自分自身ではフラットな考え方を意識的に持っているつもりですが、そもそもの構造が差別的だと、フラットに考えていてもそれは潜在的には差別となってしまいます。例えば、EDはPMSの5倍研究費がついたりとか、構造の偏りをしっかり是正することが大事になる。」と潜在的な日常⽣活の向き合い方について語りました。
最後に、ご来場いただいた方々へ、佐々木さんが「ジェンダード・イノベーションの持つ力、可能性というのを感じていただけたらと思います。」と話し、スプツニ子!さんが「こんなにもChatGPTを使っている会場は初めてで嬉しいです。ぜひどんどん触って飛び込んで知っていってほしいし、どんどん世界を変えていきたいなと思っています。日本企業は理系女子を血眼で探しているのですごくチャンスが大きい分野です。もっと理系女子を増やして皆さんと一緒にコラボレーションできたらと思います。」と、メッセージを残し、トークイベントは無事終了しました。
『ELLE Japon(エル・ジャポン)』について
世界で愛されているファッション誌『ELLE(エル)』の日本版として『エル・ジャポン』(毎月28日発売)は1989年に創刊、2024年に35周年を迎えます。コンセプトは「Open your appetite –好奇心いっぱいに⽣きて」。1945年のフランスで初めての『エル』が発刊されたとき、『エル』の創始者であるエレーヌ・ラザレフが読者に向けて語りかけた言葉です。ファッションをキラーコンテンツに、ビューティ、カルチャー、ライフスタイルなど、今に⽣きる女性たちを元気にするメッセージと明日へのイメージを高感度に発信します。そして1996年、初の女性誌ウェブマガジンとして誕⽣したのが『エル デジタル』。2021年に25周年 を迎えた『エル デジタル』は、時代のニーズに合わせて進化を続け、デジタルファッションメディアのパイオニア的存在として、圧倒的なボリュームのオリジナル記事を毎日更新しています。
また、『エル・ジャポン』の雑誌には、「FSC® 認証」※1の紙を使⽤しています。紙面においては、環境に配慮されたベジタブルオイルインク、nonVOCink( 一部除く) を使⽤しています。2023年3月からはグリーン電力の導入※2による印刷・製本でお届けしており、責任ある調達と雑誌づくりを目指しています。
※1 適切に管理された森林と、責任をもって調達された林産物に対する国際的な認証制度(ライセンス番号: FSC® -C 103651)※2グリーン電力の導入とは、「グリーン電力証書システム」を使⽤した取り組みです。自然エネルギーにより発電された電気の環境付加価値を「グリーン電力証書」という形で取引しており、「グリーン電力証書」を購入することで、証書に記載された電力量(kWh)相当分の自然エネルギー由来の電力を使⽤しているとみなされ、国内の自然エネルギー普及や温暖化の抑制、省エネルギー(化石燃料の消費削減)等に貢献することができます。