映画『チャイコフスキーの妻』は、ロシアの天才作曲家を盲目的に愛した“世紀の悪妻”アントニーナの残酷な愛のかたちを鬼才キリル・セレブレンニコフ監督(『LETO -レトー』『インフル病みのペトロフ家』)が大胆な解釈で映像化した話題作。
待望の日本公開初日を迎えた9月6日(金)、新宿武蔵野館にて19時20分の回の上映後に、アイドルの和田彩花氏登壇のトークイベントが行われた。MCは映画・音楽パーソナリティの奥浜レイラ氏が務めた。
まず映画の感想を聞かれると和田氏は「いろいろな愛が描かれているなと思いました。優しい愛や強い愛だけでなく、相手のことを恨んでしまうような愛や、愛のかたちが変化することによって人間関係も変わっていく様子が芸術的に描写されていると思いました。」とコメント。本作はフランスで17万人超を動員する大ヒットを記録したが、和田氏もフランスでの公開時にパリの劇場で本作を観たという。フランス語を100%理解できたわけではなかったが、綺麗な映像に魅入ったと当時の思い出話を明かす。好きなシーンを聞かれると、チャイコフスキーとアントニーナの結婚式のシーンをあげ、「アントニーナは嬉しそうだけど、対照的にチャイコフスキーは感情を抑えたような表情が印象的でした。偉大な芸術家になりつつあったチャイコフスキーが、当時の社会で当然あるべきとされている男女の結婚という規範に従ったことを責めることはできないと思いました。」と語った。
アントニーナについては、「19世紀当時は、アントニーナは個人ではなく、“芸術家の妻”でしかなかった。妻としてどうであるかということばかりが語られていた。「天才芸術家の横にいればいい」というセリフからも象徴されるように、女性としての役割があって、悪妻という世に広まっている通説も、偏った視点から語られていると思いました。改めて私たちもアントニーナのことをどのように形容できるのか考えたいです。」とコメントした。
またロシアのウクライナ侵攻やLGBTQへの抑圧を批判するなど、政権に批判的な立場を表明し、現在はロシアを亡命している本作の監督・脚本を務めたキリル・セレブレンニコフ監督について、「究極な状況で作られた作品を観ることができるなんて、いろいろと考えさせられますよね。」「チャイコフスキーのセクシュアリティの扱い方も素敵だなと思いました。チャイコフスキーのセクシュアリティは劇中のセリフでははっきりと語られていないですよね。セクシュアリティに関して本人が言わないのであれば、周りの人も言わないというのがマナーなので、その現代的な感覚を19世紀の社会の中に取り入れているのが素敵でした。」と語った。
最後に「結婚して兄妹愛のような家族の愛のかたちを作ろうとしたチャイコフスキーのことも理解できるし、男女の結びつきを求めたアントニーナのことも理解できる。どちらも悪くないし、しょうがなくすれ違ってしまったというところも、観客のみなさんに伝わっていたら良いなと思いました。本日はありがとうございました。」とトークを締め括った。
世界が注目する鬼才キリル・セレブレンニコフ監督日本公開最新作『チャイコフスキーの妻』は、2024年9月6日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開中!
『チャイコフスキーの妻』
監督・脚本:キリル・セレブレンニコフ 出演:アリョーナ・ミハイロワ、オーディン・ランド・ビロン、フィリップ・アヴデエフ、ユリア・アウグ
2022年/ロシア、フランス、スイス/ロシア語、フランス語/143分/カラー/2.39:1/5.1ch 原題:Tchaikovsky's Wife 字幕:加藤富美 配給:ミモザフィルムズ
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