1997年の結成から瞬く間にその名前を全国区に轟かせ、一躍人気BANDとなった「kein」。
人気絶頂の中、2000年8月21日名古屋ボトムライン公演をもって突然解散し、わずか3年の活動にピリオドを打った。。。
2022年5月1日 最新のアーティスト写真と再始動ワンマンライブ「はじまり」を発表。
チケットは発売1分もせずSOLDOUTとなり、まさにプレミアムライブと化した公演が昨日、名古屋ダイアモンドホールにて行われた。
そのLIVEの模様をLIVE写真と共にいち早くリポートする!
90年代に隆盛を極めた、名古屋を拠点にしたヴィジュアル系シーン、いわゆる“名古屋系”を牽引してきたが、2000年8月21日、名古屋ボトムラインでのライブを最後に突如として解散したkein。活動期間も約3年と短く、ある種の伝説と化していたそのkeinが、解散からちょうど22年が経つ2022年8月21日に、名古屋ダイアモンドホールで復活ライブを行った。ライブタイトルは、22年前のラストライブと同じく「はじまり」。当時のファンは“あの日”の続きを見せてくれるのかと、リアルタイムで見ることができなかったファンは“あのkein”のライブをついに目撃できるのかと、それぞれがそれぞれの思いと期待を寄せ、チケットは発売後、追加席含め、すぐさまソールドアウトとなった。
一時活動休止中のlynch.の玲央(g)、kein解散後に始めたdeadmanを再始動中の眞呼(vo)とaie(g)、deadman、lynch.(サポート)、the studs、HOLLOWGRAMなど数多くのバンドでプレイしてきた攸紀(b)という解散時のkeinのメンバー4人に、ポストロックバンド、101AのSally(dr)を加えた新生kein。玲央いわく、これはこの日だけの限定復活ではなく、それぞれの活動と並行して全力で臨む本気の再始動だそうだが、では、果たしてそんな5人がどんなライブを見せてくれるのだろうか。さっそくその即レポを公開する。
登場SEが流れると、暗めのステージの後方に掲げられた巨大なバックドロップのkeinのロゴに照明が当たり、楽器陣4人が現れ、それぞれ所定の位置につく。最後に眞呼が現れ合流すると、1曲目の「嘘」を始める。今年の4月1日、すなわちエイプリルフールの日に突然、なんの告知もなくYouTubeにリリックビデオが新録でアップされた、言ってみれば新生keinのはじまりの曲だ。lynch.での上手に見慣れた玲央が下手にいることにしてもそうだが、それぞれがスキルアップし、ミュージシャンとしてアップデートされたうえで再会したこと、バンドの屋台骨と言えるドラマーが新しくなったこともあり、サウンドやグルーヴがソフィスティケイトされた印象になったことも含め、90年代当時に彼らのことを追っていたファンにとっても新生keinは新鮮に映ったに違いない。なお、玲央は下手、aieは上手とそれぞれステージの両端に立ち、攸紀は上手側のややセンター寄り、Sallyは下手側のややセンター寄りと、センターの眞呼を中心に、正面から見て誰も隠れないように配置されていたのも特徴的だった。
曲は、サーカスをイメージさせる幻想的なSEから始まる「an Ferria Wheel」を経て、音源化されていない「Mr.」「籠庭」「color」「思い出の意味」へと進む(というか、keinは音源化されている曲が極端に少ない)。一見、無機質なようでいて、めちゃめちゃ人間臭い温もりのある歌声が心地よく、パントマイムのような動きでも魅せる眞呼。テレキャスタータイプのギターでぶっといサウンドをぶちまけながらも、足元のモニターに座ってアコギのように弾いたり、ペンタトニックのソロを決めたりと、相変わらず自由奔放なaie。ストラトタイプのギターを持ち、ディレイなど空間系エフェクトを駆使したサウンドを軸に、ギターソロもメインで担当する玲央。keinのメインソングライターであり、ダウンピッキングの8分弾き、指弾きによるしなやかなプレイなど多彩なアプローチで曲を彩り、数曲でコーラスも担当する攸紀。8ビートのみならずトリッキーなリズムも多用され、展開も多いkeinの複雑な楽曲を、タイトなドラムでしっかりと支えるSally。そんな5人によって生まれ変わったkeinの曲や音を、オーディエンスは食い入るように聞き入る。
deadmanバージョンでも知られる「ブルーベジー」では、眞呼が床に座り、歌詞の通り、まるで“動けない哀れなピエロ”になったかのように手を差し伸べて歌う姿が印象的だった。ブルージーな玲央のギターとフィードバックするaieのノイジーなギターのコントラストも絶妙なスロー曲「暖炉の果実」を経て、アッパーなナンバー「Be Loved Darling」から、次第にオーディエンスは体を揺らし始める。「絶望」では攸紀が前に出て弾いたり眞呼がタンバリンを叩いたりとオーディエンスを盛り上げ、「People」「君の心電図」と終盤に向かうにつれ、どんどんライブはヒートアップしていく。そして再び眞呼がタンバリンを手に「FLASHBACK THE NEWSMAN」を歌い、本編最後をアップテンポのオルタナナンバー「グラミー」で締めた。
ここまでMCなしで、本編14曲をぶっ続けた。ファンに媚びるようなサービスも、新曲やカバー曲を披露するなどのサプライズも一切ない。なんとも潔い、彼ららしいライブだった。
拍手によるアンコールに応え、メンバーがステージに再登場。眞呼が「まだ声は出しちゃいけないけど、そのまま楽しんでいってください。いいかい!」と煽り、ハードチューン「keen scare syndrome」で攻め立てると、オーディエンスは拳やヘドバンで応酬する。そして間髪入れず、オリジナルkeinのラストシングル曲となったハードコアな「クランケ」へ。本編以上に激しい2曲を畳み掛け、オーディエンスたちはすっかり解放されたようにはじけ、声は出さずとも体全体を使い狂喜乱舞する。その光景は、新生keinのはじまりを象徴するものだったと言えるだろう。
「また会おう!」
眞呼がそう言い放ちステージを去っていくも、オーディエンスたちは精一杯の拍手で気持ちを贈り、客電がつきライブ終了のアナウンスが入っても、その拍手はしばらくやまなかった。それだけの余韻を残して終わった、怒涛のような激しさで駆け抜けた密度の濃い90分のライブ。こうして「はじまり」の伝説が、またはじまった。
なお、10月20日にはEX THEATER ROPPONGIで、この「はじまり」の追加公演が行われる。
TEXT:吉田幸司(ROCK AND READ編集長)
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PHOTO:マツモト ユウ