2nd LIVE「MAKE SMLE」から約１年、『石原夏織LIVE 2022「Starcast」』が3月12日にTACHIKAWA STAGE GARDENで行われた。27日に横浜で開催される公演と合わせ、サブタイトルには「Vega」「Altair」とそれぞれに星の名前をつけるなど、異なる2つのライブをリンクさせた形となった今回のライブ。ここでは「Vega」夜公演の模様をレポートする。
「Vega」は七夕の「織姫」としても知られる星の名前だ。それを体現するかのように、恋のはじまりを描いた淡いラブソングの「Orange Note」、運命的な出会いを確信した「フィービー・フィービー」、そして思いが通じ合った喜びをキュートに綴った「ポペラ・ホリカ」と、恋する女の子の心情を表現した3曲でライブはスタート。いきなりコンセプチュアルな展開に、「今回のライブはいつもと違う」と感じ取ったファンも多かったことだろう。
MCを挟むと、今度は初披露曲の「わざと触れた。」、そして「Plastic Smile」へ。ここで魅せたのはダンサーとのコラボレーションだ。「わざと触れた。」では石原夏織から少し離れたステージで女性ダンサー2人がストーリー性のあるコンテンポラリーダンスを表現。また、「Plastic Smile」では一転し、石原夏織とダンサーによる1対1の親和性のある踊りで観客を魅了した。
これまでと違うのはセットリストやダンスの構成だけではない。いつもなら衣装チェンジの合間に体当たり的なチャレンジ企画でファンを楽しませてくれる幕間映像も今回は封印。代わりに、大切な人への想いを綴ったストーリーを風景映像とモノローグで展開していく。しっとりとした声で語る言葉からは強さや切なさ、そして儚さが感じられ、これまでにない大人な世界に誰もが耳を奪われているようだった。なお、この日披露された物語は「Vega」視点で描かれたもの。27日に開催される「ALTAIR」公演では異なるストーリーが展開されるそうだ。
中盤に入り、真っ白なドレスに衣装に着替えて再びステージに登場すると、ここからは彼女自身にとって初の試みとなるアコースティックコーナーへ。「キミしきる」、「雨模様リグレット」など星や空を連想させる情緒的な選曲も相まって、優しい時間が流れていく。曲が終わると大きな拍手で包まれ、その反響にふっと緊張がとけたのか、「すごく楽しみにしていたコーナーなんです」と笑顔で気持ちを吐露した。続いては、「せっかくの生演奏なのでカバーを歌いたいと思います」とMr.Childrenの「星になれたら」を。（なお、昼公演ではBUMP OF CHICKENの「天体観測」をカバー。）「優しく私の背中を押して、勇気づけてくれる曲」だそうで、そうした楽曲への思いをオーディエンスに届けるように、言葉の一つひとつを丁寧に歌い上げる姿が印象的だった。
後半は「Page Flip」から。先ほどまでのアコースティックな世界観とは打って変わり、優雅さと強さを見せたステージングで会場のボルテージを一気に上げていく。ここからはたたみかけるようにラストスパートへ。「虹のソルフェージュ」でさらなる壮大さを表現していくと、ラストは今回のライブタイトルにもなっている「Starcast」を披露。会場はファンが掲げるペンライトの青い光であふれ、まるで星空の中にいるようだ。その光の先で石原夏織は、ダンサーたちに包まれながら力強く歌声を客席に届けていく。カタルシスを感じさせるファルセットが全身に響いてくるようでたまらなく心地いい。そして終盤には余韻を残すように曲のテンポを落としていくと、最後はときが止まったかのような静けさの中、本編を終えた。
アンコールでは思わぬサプライズが。なんとここでニューシングル「Cherish」を初お披露目。キュートなダンスが繰り広げられ、それに呼応するようにファンもピンク色のペンライトを灯して一体感を作り出していく。また、アンコールの最後に届けたのは「You & I」。ファンの顔を見つめながらステージを自由に動き回る姿は、この日のライブコンセプトとリンクするように、会場にいるみんなと出会えた喜びを一人ひとりに伝えているかのようだった。
何もかもが初挑戦づくしで、セットリストさえも予測不能だった今回のライブ。はたして「彦星」を表す「Altair」公演はどんな選曲で、どんなステージを見せてくれるのか――。期待に胸が膨らむ。
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