
芸能事務所YU-Mエンターテインメント株式会社と、タレントのキャリア支援を専門とする株式会社ツギステが、所属タレントの心身の健康と、安心して活動できる現場づくりを目的とした外部研修プログラムを共同で実施する。その一環として、7月17日、18日の2日間に渡り都内某所でアイドルリスク対策講座が開催された。ここでは、メンタル・トラブル防止研修をテーマに掲げた7月18日(金)の講座の模様を中心にレポートする。
講座には、YU-Mエンターテインメントに所属するアイドルグループのアップアップガールズ(仮)、アップアップガールズ(2)、アップアップガールズ(プロレス)、UP UP NEW AGE ネオアゲのメンバー、さらにはタレントをサポートするスタッフ、マネージャーも参加。
初日の17日は、『I LADY CARDで考える わたしらしい性と健康』と題して、「SRHR」(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)に関するワークショップが行われた。「I LADY CARD」は、身近なSRHRに関するひとつの質問やシーンごとに、多様な選択肢カードに基づいて他者と対話するという、さらなる気づきや学びを得るツール。メンバーとスタッフが参加し、カードゲームを楽しむように和気藹々とした雰囲気で、自分らしく生きるために「選ぶ」ライフスキルを学んだ。
2日目の18日は勉強会のスタイルで、参加者全員が、SNS、お金、犯罪、メンタルのリスクに関する講義に耳を傾けた。

第一部の『失敗あるある&リスク対策講座』に登壇したのは、株式会社ツギステ代表取締役社長で渋谷区議会議員の橋本ゆき。自身もアイドル経験のある橋本氏は、SNSのリスク管理についてを中心に講義を展開。何気ない写真や書き込みが引き起こしたリアルな失敗談などに、参加者は真剣な眼差しで聞き入る。投稿する前に改めて確認することが結果として自分を守ることにつながるなど、身近なSNSの落とし穴をどうやって回避するか様々なアドバイスが語られた。さらには、マルチ商法などによる詐欺被害の危険性、クレジットカードやデジタル決済など利便性の高さゆえお金を使いすぎてしまうことの注意など、とてもわかりやすく講義が進められた。

第二部には精神科医の紫藤佑介先生が登壇し、『ドクターによるメンタル講座』と題して、芸能人のメンタル事情をテーマに講義が行われた。表に立つ職業だけに、精神面でより負担のかかる度合いの高いタレントやアイドル。SNSでの誹謗中傷などで心のバランスが崩れ、最悪の場合自殺を選択してしまうケースも実際にある。そうならないためにも、心の不調がない状態を作ること、メンタルを保つことの重要さが語られていく。目標設定を決めて自分のやる気を促し自信をつけていくこと、自分の現状を知ることでメンタルをよりよくする、という話に参加者も深い関心を見せた。
講座の最後には、紫藤先生が先導しマインドフルネス瞑想を参加メンバー全員で実践。また5コラム法という「出来事/状況、気分、自動思考、別の考え、結果」の5つの項目をそれぞれが書き出し、自分の状態に向き合うという時間も設けられた。

アイドルに特化したケア講習という新たな試みを終えたあと、登壇者と受講したメンバーがコメントを語ってくれた。
まず受講者として参加した、アップアップガールズ(プロレス)のらく、アップアップガールズ(2)の新倉愛海、アップアップガールズ(仮)のMINAに講義の感想を聞いた。
らくは、「紫藤先生がYouTubeされていて、私すごい見てたんです。まず「いつも見てる方だ!」っていうのにびっくりしました(笑)。先生も言われてたマインドフルネスとか、普段自分もやってたりする話が多くて、すごい頷くことも多くて、改めて深く考えるきっかけになりました。SNSの書き込みは、私も普段から気をつけているんです。でも、ほんとにこれはつぶやく必要があるのかな?って、こうして話を聞かないと改めて深く考えないじゃないですか。ほんとに今回気づくことがたくさんでした」と語った。
医療系ユーチューバーをよく見るというらくは、今回の講義はとても刺激があったという。「何度も言っちゃいますけど、ほんと先生にびっくりしすぎて(笑)。紫藤先生もですし、しゅんしゅんクリニックPさんとか、毎日お医者さんのユーチューバーさんを見てるんです。大好きでいつも見てるので、今日は興味津々でめっちゃメモしました(笑)。あと、みんなで瞑想しましたけど、瞑想は家でよくやってるんです。やっぱり瞑想をやると違います、その日1日が変わります。落ち着いていられるし、考え方も結構ポジティブでいられるんです。今日は生で興味あることを学べてうれしかったですし、これを活かして今後の活動も頑張りたいと思いました」と、講座の喜びを興奮気味に語った。
新倉は、「アイドル活動する中で、特にSNSの使い方は気をつけないといけないなっていうのは感じていたので、改めて橋本さんの経験談やいろんなリスクのお話を聞けてよかったなと思いました。一番印象に残ったのが、“裏アカでの書き込みってほんとに必要?”ってところでした。私は裏アカは持ってないですし当然ですけど、表で書き込んで炎上しちゃうようなことは言わない方がいいと思うタイプなんです。それでも自分の気持ちが落ち着かないときに衝動的に書いてしまう可能性って、誰しもがあると思うんですよ。そういった意味で、紫藤先生のメンタル講座も一緒に受けられたことがすごくよかったです。心の安定につながったら、衝動的になってしまう危険性も減るのかなって思いました」と、有意義な時間を過ごせたことを口にした。
さらに新倉は、「私は自分でメンタルは強い方だと思っているんですけど、最後の5コラム法を自分で書きながら、自分はメンタル大丈夫だと思いながらもすごい学びになるなと思いました。日常で感じる何気ない出来事でも、いろんな視点で考えて結果を出すことでもっとよくなることってあるなと思えたんです。簡単にできるし、これは今後も実践していきたいなと思いました。明るくポジティブな思考でできることを学べてすごくよかったです」と、講義に参加してポジティブなマインドをまたひとつ獲得できたうれしさを語った。
MINAは、「今の時代SNSをやることってどうしても必要なことだし、アイドルとして活動する上で絶対毎日触れるものだから、それとどう向き合うかを改めて学べるいい機会でした。実際にSNSで他のアイドルさんが炎上してるのを見ても、今までは自分には関係ないって思ってたんです。でも、実は身近なリスクでもあるし、これからは他人事って思わず、いつ自分に起きてもおかしくないんだって親身に受け止めようって思いました。メンタル講座では、私は医療系の大学だったので精神分野のことを学んではいるんですけど、その知識があったとしても実際に自分の生活に活かすってなかなかできなくて、私自身メンタルを崩したことがあったんです。今回は知識だけじゃなく対処法も学べたので、今後の生活にも活かせそうだなと思いました」と語った。この春まで看護師として働いていた彼女に、看護師の目線でどう感じたかを聞いてみると、「自分の状況がわかっていても自分がつらいときはやっぱりつらくなるし。対処したくても、その原因が環境だったり他からの要因だったりでどうしても避けられないことってあるんですよね。身内に相談しづらいことだったらカウンセラーさんや病院に行くとかもアリだなとか、もっと周りを頼ったら自分で抱え込まずに済むのかなっていうのを今回改めて学びました」と、人を頼るメンタリティーを痛感したことを口にした。
主催者でもある橋本氏には、今回の講座のきっかけから話を聞いた。「もともとYU-Mさんはツギステを立ち上げたばかりの頃に、タレント、アイドルのキャリア支援の文脈などでも同じような課題意識を持っているとお話があって、非常に意気投合したんです。今回、山田さん(YU-Mエンターテインメント代表取締役、山田昌治)から、「タレントに向けたトラブルやリスクのケアになるような研修ができないか」「勉強できる機会が作れないか」というご相談をいただいたんです。私たちとしても、アイドル現役時代にトラブルなく活動できて心も体も健康なまま卒業できることが、その後の人生を見てもどれだけ大事かはすごく感じていたので、「ぜひやりましょう!」って今回の講座の企画が始まりました」と語った。
講座の内容については、「どういう内容がいいかは、山田さんと相談させていただきながら研修のメニューを作らせていただいたんです。1日目は、女性ならではの性と生殖の健康と権利をテーマにワークショップ形式でおしゃべり会みたいな形で進めました。2日目の今日は、がっつり勉強会みたいな感じで、アイドルだけでなく若い人の中でよくある、SNSやお金のことだったり身近なトラブルを取り上げて、こういうことがあるよってことを知ってもらうのと、自分でもできるメンタルセルフケアの方法を知ってもらうことを趣旨として設計させてもらいました」と解説してくれた。
実際、講義をやってみての感想を聞いてみると、「普段ツギステは1対1で相談受ける形なので、こうして大勢のみなさんに講義するというのは初めての試みだったんです。研修プログラムもこの日のために作ったものなんです。自分たちとしてもすごく新鮮でしたし、みなさん真剣に聞いてくださってすごくうれしかったです。率直なみなさんからの感想を楽しみにしています。やっぱり、こういう内容って学校で教えてくれないものじゃないですか。これはアイドル全般の話ですけど、アイドルの子がリテラシーやモラルが育まれないままで、本人に悪気がなくトラブルを起こしてしまい信用を落とすこともあるわけで。そうなると一番損をするのは本人なんだよっていうのは伝えたいと思っているんです。今回はYU-Mのタレントのみなさんに向けての講義でしたが、こういうことをいろんな事務所のアイドルさんに届けられたらいいなと思っています」と、今後の展開にも手応えがあったことを口にした。
そして、現役アイドルに向けて橋本氏からのエールをもらった。「今、頑張っていることや芸能の世界でやってきたことは、どこの世界でも活かされるものだと思っているんです。よく「芸能界にいると将来の不安がどうしてもつきまとう」って話を聞くんですが、そこは不安に思わなくていいと思います。目の前のことを頑張って、今の自分ができること精いっぱいやっていったらおのずと未来は開けると思うので、プラス思考プラス思考で頑張ってほしいなと思います」と前向きなメッセージを語ってくれた。
続いて紫藤先生に、アイドルへの講義について尋ねた。「僕は普段精神科医として働いているんですが、こうした講義もやらせてもらってるんです。対経営者とか対会社というのが結構多くて、ちょっとユニークなところだと対ホストというのもありました。でも、対アイドルは今回が初めてだったんです。みなさん、すごく真面目に聞いてくださってすごいなって思いましたね。内容については、やっぱり業界によって悩みの種類は違ってくるので、自分なりにデータを調べて、芸能関係の人がどんなことで悩みやすいのかを話に入れ込みました」と語った。
内容で特に重きを置いたポイントについて聞くと、「芸能関係で普通の他の仕事の人と一番違うのは、やっぱりSNSの影響ですね。どうしてもSNS自体は避けて通れないと思いますし、別に本人がやってなくても、表に出る人に対していろんな意見や誹謗中傷はどうしても出てきてしまう。その上でメンタルをどうマネージメントするかが、今後メディアに出る人には一番大事なのかなと思っています」とメンタルヘルスのマネージメントの大事さを口にした。
そして、アイドルに向けてのアドバイスを聞いてみると、「やっぱり自分のメンタルを大切にしてほしいですね。忙しかったり周りの重圧で自分自身と向き合う時間が少なくなって、気がついたらメンタルがやられてる人って結構多いんです。なので、定期的に自分の状態がどうなのかを確認する時間をとってもらいたいです。そうやって自分の特性を知ることで対処法もわかると思います。自分のメンタルケアをしっかりして芸能活動を頑張ってもらいたいです」






















