スタイリストでファッションクリエーターのセイショーコさん(40)が 5 月 25 日、東京都江東区の「EARTH+GALLERY で開催中のアップサイクルアート展「I’m still alive みんなは終わりというけれど」で、エシカルアパレル「SHIFT80」代表の坂田ミギーさんとのトークショーに出席した。
社会変革のためのファッション・アートブランドである SHIFT80 は、ケニア現地のデザイナーや縫製士とともに古着をアップサイクルしたコレクションを発表し、その利益でスラム支援活動を行っており、今回の展示会ではまだ美しさがあるにも関わらず廃棄されている花「ロスフラワー」をアップサイクルする活動を展開している「RIN」がコラボレーションし開催。
アフリカ最大の古着輸入国であるケニアに送られた古着と、日本の着物生地を掛け合わせた新アップサイクルコレクションを身に着け登場したセイさんは「〝人生が変わるファッション〟を考える」をテーマにトークを展開した。
〝青髪の奇才〟とも称されるセイさんはカナダのシンガー・ソングライター、アヴリル・ラヴィーンの『ハローキティー』ミュージックビデオの衣装デザインスタイリングなど、幅広いメディアで世界のトップアーティストや芸能人のスタイリングを数多く担当。
自身がスタイリストの道を志したきっかけについて「幼少期は洋服や下着をあまり買い与えてもらえなかった環境で、その分だけ衣類に対するこだわりや執着心が強くなった」と振り返り、「好きとか夢とかよりも、誰にも負けたくないという気持ちでスタイリングで勝負しました」と告白。苦労した幼少期を「お下がりが多くて、ボロになっても工夫して着ることが普通だと思っていたけれど、大人になってそうでもないことを知ったんです」と笑うセイさんに、坂田さんは「東アフリカのキベラスラムで生理用品の支援プロジェクトを始めた際にも、そもそも下着を持ってないという話があって」と話し、セイさんも「その環境がかわいそうとかそういうことでもない。当たり前だと思って気づいていないんです」と語った。
トークテーマでもある「人生が変わるファッション」について聞かれたセイさんは、大病を患った知人に、花柄や鮮やかで楽しくなる色を身に着けるようアドバイスをしたというエピソードを紹介。
1年後、無事完治の報告を受けた際に「『あの時の黄色のスカートにすごい救われた』と言ってくれたことが、一番うれしかったんです。身につけるものが与える影響って嘘じゃないと思う」と力を込めるセイさんに、坂田さんも「服は 1 番自分に近いところに 1 日中あるもの。質感や色、柄がその人にすごく影響を与える」と語り、「セイさんはまるで〝ファッションシャーマン〟。その人必要な方向をちゃんと見極めて、その方向に意識が向くようにしてあげる、それをファッションというツールでやってるのがセイさんなんだなって」とにっこり。
2021年にはパーソナルスタイリング事業を立ち上げており、「人様のことは完璧にできるけれど、自分のこととなると意外と難しい。どなたにでも見ていただけるっていうのは、これから必須になってくると思う」と話し、「好きなものと似合うものは違う。ご自身の服でも何が似合うかというのはわからない。そういう時のためにスタイリストがいる」とアピール。
セルフスタイリングに悩む方へのファッションの楽しみ方には「おそらく大半の方のちょっとした違和感って、何かが多すぎる気がする。たぶん色やアイテムが多すぎて頭を抱えてるんだろうな」と分析。「足すことの美しさもあると思うんですけれど、普段の社会で生きていくには引き算が美しい」と語り、「スタイリングに違和感を覚えたら、まずは 1 個引いてみる。アクセサリーを 1 つや色を 1 つ。引いて、引いて、引いていくと、これでなんとなくしっくりみたいな。引いて残ったものが、本当にその人を引き立たせるもの」とアドバイスし笑顔を見せた。
■セイショーコ(Shoko Sei)
広告、雑誌、ミュージックビデオ、TV、映画、舞台など幅広いメディアの第一線で活躍する衣装スタイリスト、衣装デザイナー。アメリカの衣装デザイナー、パトリシア・フィールド(『プラダを着た悪魔』『Sex and the City』ほか)に師事したことを機に、代表作であるアヴリル・ラヴィーン『ハローキティー』ミュージックビデオの衣装デザインスタイリングを含む、幅広いメディアで世界のトップアーティストや芸能人のスタイリングを数多く担当している。あらゆるジャンルにおいて独創的であり続ける稀有な才能と、日本のクリエイティブ向上に貢献してきた実績が高く評価され、衣装クリエイティブに限らず手腕を発揮する数少ないクリエーター。“青髪の奇才”と称されている。また、近年はこれまでの活動経験を活かし一般ユーザーを対象にした、コーディネートとスタイリングを通じて“素敵な自分”を発見してもらえるようなサービスも提供している。
■ SHIFT80(シフトエイティ)
「SHIFT80」は、すべてのアイテムがアフリカの貧困児童の教育機会創出や生活支援、困難な状況にある女性へのサポートにつながる社会変革のためのファッション・アートブランドです。ブランド名は“利益(分配可能額)の 80%を必要と する人々とシェアして、世界をよりよくシフトさせていくこと”に由来します。エシカル(=倫理的、道徳的)なビジネスを展開し、品質とデザインへのこだわりはもちろんのこと、人と社会、自然環境に配慮したものづくりを実践しています。先進国からアフリカに大量に送られている古着問題に警鐘を鳴らすべく、アフリカのデザイナーやテーラーと古着をアップサイクルするアクションのほか、ケニア現地モデルとしてキベラスラム出身・在住の若者を起用したロールモデル育成など、多面的な活動を展開しています。