1月10日、和田彩花が東京・LOFT HEAVENで自身のバンドとともにワンマンライブ『和田彩花とオムニバス ふつうに?ライブ』を開催した。
昨年11月23日に配信リリースした初のソロアルバム『私的礼讃』は、和田のファンだけでなく、音楽リスナーからも高い評価を得ている作品だ。2022年早々ではあるが、「ちょっと旅に出る」という和田にとって今年最初で最後のライブとなる。ライブで彼女は、劔樹人(あらかじめ決められた恋人たちへ)がバンマスを務めるバンド、オムニバスとともにアルバムからの楽曲、ラッパーのvalkneeと共作した新曲、小沢健二のカバーなどを披露した。そして、1月31日にライブアルバムを配信リリースすることを発表した。
なお、本公演は新型コロナウイルス感染予防対策に配慮し、観客はハンドクラップで和田に応援を送った。
ソールドアウトとなった会場に、和田彩花とオムニバスのメンバーが登場。和田が「今日は『ふつうに?ライブ』なので楽しんでいってください」と語り、「Une idole」からライブはスタート。フランス語の歌とグルーヴ感溢れるサウンドが絶妙なマッチングを見せる。続くミディアムポップな「ホットラテ」は、エモーショナルに進化したサウンドを聴かせてくれた。
和田のバンド、オムニバスのメンバーは、劔樹人(B / あらかじめ決められた恋人たちへ)、オータケコーハン(G / あらかじめ決められた恋人たちへ, LAGITAGIDA etc.)、楢原英介(Violin, Key / VOLA & THE ORIENTAL MACHINE)、U(Dr / ソロアーティスト、コレサワなどのサポートメンバー)、ハラナツコ(Sax, Flute / 折坂悠太、LARNERSなどで活動)というラインナップ。ほとんどのメンバーは、2019年のソロキャリアの始まりから和田をサポートしているメンツだけに歌と演奏のコンビネーションはばっちりだ。
彼女たちは、別れ際の心模様を歌う「スターチス」、ファンキーなサウンドが絡み合う「空を遮る首都高速」と次々と曲を披露していく。ウォームな温度感のグルーヴは最高に気持ちがいい。
次に演奏する曲がこの日初披露の新曲(タイトル未定)であることが告げられる。続けて彼女は「今年は、ライブはこれで終わりなんですけど、新曲もあるし、これからできる曲もあります。あと、1月31日にライブアルバムが出るんです。もしライブに行きたいなと思ったら、そのアルバムを聴いていただけたらうれしいです」と語ると観客は拍手で応えた。
初披露の新曲は、和田がvalkneeと共作したフルートの音色が印象的なドリーミーなポップソング。かわいいメロディでラップする和田の姿がとても新鮮だ。そして、小沢健二が昨年発表した「ウルトラマン・ゼンブ」をカバー。テクノポップフレイバーのオリジナルとはひと味違う、まどろみ感のあるソフトサイケなアレンジが心地よく響く。
さて、これまでの和田のライブは、会場の装飾や映像なども含めてひとつの世界観を見せるインスタレーション的な側面があった。だが今回はタイトルに『ふつうに?ライブ』とあるように、歌と演奏とトークという通常のライブスタイルで進行された。MCタイムでは、「実はちょっと気になっていたことをみんなに聞いていきたいです」と和田とメンバーのトークが繰り広げられた。彼女は「身長はいくつですか?」「サックスはいつ始めたんですか?」といろいろな質問をメンバーにぶつけていく。さらに和田は「私から私に質問していいですか? 一昨日読んでた雑誌に、自分で自分にインタビューしてるのが載ってて結構面白かったんです」と語り、「あなたは、今どんな食べ物が好きですか?」と自分に問いかける。すると彼女は「私が今好きな食べ物は…グミかな」と回答。彼女の「今日は梅味食べました。みなさんも帰るとき梅味食べてくださーい!」という声に、笑い声的な拍手が起こった。
和やかな空気の中、アルバムタイトル曲の「私的礼讃」が披露される。彼女は流されない自分の大事さを軽やかに伝える。そして、タイトに疾走していく「みやしたぱーく」、ポリリズムなサウンドの「ゆりかご」、エレクトロファンクな「無題」を歌唱し会場のテンションを高めた。さらに、凛とした空気感が伝わる「For me and you」、メロウなグルーヴが響く「あなたが選んだものあなたが選ぶもの」をプレイ。彼女は、全ての人たちを肯定するメッセージを全ての観客にしっかりと届けた。
最後のMCタイムで、劔から和田に「今年これが最後のライブにしますって言ったのはどうしてですか?」という質問が飛ぶ。和田は「大きな声で言うつもりはないんですけど、ちょっと旅をしてきます。でも、そのうち帰ってきます。それに曲の発表はするし、いろいろ続く予定なので楽しみにしてください!」と決して音楽活動をストップするわけではないことを笑顔で語った。
和田が「最後の曲です。みなさん今日はありがとうございました!」と声を上げ「パターン」が披露される。マイクを握った彼女は、ピアノの旋律とともに愛で語り合いたいと歌う。会場は美しく温かい響きに包まれ、観客から大きな拍手が送られた。和田は「それではみなさんまた来年!(笑)」とにこやかに挨拶しライブは終了となった。
和田彩花のライブは毎回常に違ったものを提供してくれる。ライブごとにテーマ性があるのだから、そうなるのは当然かもしれない。だがそれ以上に、彼女とバンドメンバーとのセッション感、観客との間に生まれる空気感が瞬時に反映され、いい変化を生み出しているように思える。有機的な作業の経験を経た和田は、今年は音楽制作の面で楽しませてくれるという。和田彩花がこれから作り出す作品にぜひ期待してほしい。