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特別公演で見せた”伝統と革新”の真価。上妻宏光、ソロデビュー20年の集大成 

上妻宏光

三味線プレイヤーの上妻宏光が10月24日、東京・Bunkamuraオーチャードホールでソロデビュー20周年特別公演『上妻宏光 Concert ”伝統と革新” 』を開催した。10月2日に兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールで同コンサートを開催し、SING LIKE TALKINGの佐藤竹善、元THE BOOMの宮沢和史、アコースティック・インストゥルメンタル・ユニットTSUKEMENがゲストで出演。東京公演にはゲストに由紀さおり、東儀秀樹、押尾コータローが参加。上妻と共演しコンサートを盛り上げた。感染予防対策を徹底した上で通常のキャパの半分で行い、ソロデビュー20年、三味線人生約40年の集大成とも言えるアンコール含め全18曲を熱演した。東京公演の模様を以下にレポートする。

緊急事態宣言も解除され、渋谷の街にも少しずつ活気が戻ってきたことを感じさせる。その中で開催された『上妻宏光 Concert ”伝統と革新” 』の会場となったBunkamuraオーチャードホールに向かう道中も、上妻の三味線の音色を楽しみに訪れるファンで賑わっていた。

開演時刻になり、オープニングを飾ったのは2018年にリリースされたアルバム『NuTRAD』より、伝統楽器と最新の音楽を融合させた攻めの一曲「AKATSUKI」で特別公演の幕は開けた。伝統と革新を感じさせる楽器を1曲目に持ってきたことで、ソロデビュー20年のアティテュードをひしひしと感じさせてくれた。続いての「BEAMS-NuTRAD-」で上妻はステージを動きながら、三味線の鮮烈な音色を繰り出す。このダンサブルなサウンドに観客の手拍子も加わり、“生”ならではの一体感を作り出した。

この日、初めてのMCで上妻は「ようやく開催できました」と、コンサート開催への思いの丈を観客に伝えた。新型コロナ感染症によるパンデミックで開催延期を余儀なくされた公演。その想いがこの一言に集約されているように感じた。そして、この日訪れた観客に感謝を伝え、アルバム『NuTRAD』収録の「Zipangu」、そして、1stアルバム『AGATSUMA』から「夕立」の2曲を立て続けに演奏。和と洋の要素を見事に融合させ、美しいアンサンブルを響かせた。楽曲を盛り立てる照明の演出も加わり、グッとその世界観に惹き込まれていく感じは、この会場にいるからこその体験で、趣を変えながらも終始コンサートを通してこの感覚があった。

伊賀拓郎(Pf)による静寂に寄りそうようなイントロから、上妻の情感を込めた歌声が印象的だった熊本県民謡の「田原坂」は、十代の頃から思い入れのあり、歌い続けている楽曲だ。続いて、はたけやま裕(Perc)との1対1の演奏で魅せた「ONE TO ONE」は、お互いのグルーヴを感じながら気持ちを高め合い、一つの楽曲として昇華させていく。上妻の流れるような鮮やかなフィンガリングにも注目が集まる。

さらに、一期一会の演奏をより強く感じさせた「FUN」。1部の最後を締め括る1曲として披露された同曲は、サポートメンバーのDJ'TEKINA//SOMETHING a.k.a ゆよゆっぺ、伊賀拓郎、渡邉裕美(Ba)らのソロセクションを設け、各々の演奏スキルと楽器の持つポテンシャルを存分に発揮。そのスリリングで躍動する演奏によって、ボルテージは最高潮のなか1部を終了。伝統と革新の真価を示したような熱いステージだった。

第1部の興奮冷めやらぬかなか、休憩を挟み第2部がスタート。紋付袴に衣装を変え、上妻のベーシックにある津軽三味線の民謡から「津軽よされ節」を披露。上妻の威風堂々とした姿からも会場の空気が変わるのを感じられた。三味線の音、魅力を伝えたい、そんな想いが存分に込められた演奏がホールの隅々まで響き渡る。

そして、上妻が生前に三味線を指導していた故・志村けんもお気に入りの1曲として志村自身もステージで演奏していたという上妻のオリジナル曲「紙の舞」を演奏。三味線一本で奏でるドラマチックな展開は、様々な情景を我々に届けてくれるようだった。

ここで上妻は一旦ステージを後にし、サポートメンバーによる演奏で雅楽の代表曲から「越天楽弦奏曲」を届けた。その白熱の演奏に続いて、ゲストコーナーへ。

その1人目として雅楽師の東儀秀樹が登場。歴史は違えど日本の伝統楽器同士のコラボに東儀とのコラボに期待感が高まるなか、切ないメロディが印象的な「Tears」を演奏。1000年以上の歴史を持つ篳篥(ひちりき)のシズル感のある音色は、当時と変わらぬ風をこの場所に運んでくるようだ。MCでは東儀との世界を回ったツアーでの思い出話で笑いを誘う。その中で先ほどサポートメンバーが演奏した「越天楽弦奏曲」の話題になり、同曲を東儀を加えて急遽少しだけ披露する嬉しいサプライズもあった。東儀と最後に届けたのは疾走感のある「獅子の風」。上妻の生き生きとした正に風を感じさせてくれる演奏と、伸びやかな篳篥の旋律のコントラストで魅了。篳篥と三味線という本来は交わる事のない伝統楽器同士の貴重なコラボレーションとなった。

続いては、ギターの可能性を広げた功績者である押尾コータローがステージに登場。メジャーでのキャリアも近い2人。押尾は上妻のことを“アガッチと呼ぶほどの仲だ。デビュー当時の話題で盛り上がるなか、2人のみでの演奏は初めてという「Wonder」を披露。2人のみの演奏とは思えない色彩豊かなプレーで観客の目と耳を釘付けにすれば、もう一曲、押尾のオリジナル曲「GOLD RUSH」を伊賀拓郎(Pf)も参加し、このコンサートのためのスペシャルバージョンで演奏。押尾の繊細でワイルドなギタープレーに、上妻も三味線でアグレッシブなライトハンド奏法など、トリッキーなテクニックで応える場面も。同じ弦楽器で型破りなスタイルを持つ2人のマリアージュ、音楽を通しての会話を楽しんだ。

最後のゲストは歌手の由紀さおり。艶やかな着物姿で登場し、まずは青森、津軽との繋がりも深い曲「りんご追分」を歌唱。キャリア50年以上を最前線で歌い続けてきた存在感のある歌声と、上妻の三味線との相乗効果は予想をはるかに上回るパフォーマンスを見せた。トークコーナーで他の人にはない表現を追求する由紀は、「伝統と革新」をテーマに活動する上妻から良い影響をもらっていると明かす場面も。お互いのリスペクトを感じさせたトークに続いて、「車屋さん」を現代的なアレンジで披露。EDMサウンドを施された同曲を、由紀はビートを身体で感じながら粋な歌声を届けた。本編ラストは、この日出演したゲストも呼び込み「宴」を演奏。人との繋がりを大いに感じさせてくれた第2部は大団円を迎えた。

そして、アンコールを求める手拍子がホールに鳴り響く。その手拍子に導かれるように再びステージに登場した上妻は、このコンサートを締め括る曲として、津軽三味線といえばこの曲という「津軽じょんから節」を最後に届けた。三味線人生を振り返るような1音1音に魂を込めた旋律。並々ならぬ想いを感じさせる威厳のある演奏は、ここまでの集大成と呼ぶに相応しい迫真のパフォーマンスで、またここから新たな旅の始まりを予感させてくれるものでもあった。

音楽活動への矜持を見せたソロデビュー20周年特別公演。『伝統と革新』という壮大なテーマの中で、上妻はどのような新しい音を届けてくれるのか、次のステージを楽しみに待ちたい。

なお、公演のセットリストを再現したプレイリストも公開されているので、併せてチェック頂きたい。

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上妻宏光

■公演セットリスト

『ソロデビュー20周年特別公演 上妻宏光 Concert ”伝統と革新” 』

10月24日@東京・Bunkamuraオーチャードホール

01.AKATSUKI

02.BEAMS-NuTRAD-

03.Zipangu

04.夕立

05.田原坂

06.ONE TO ONE

07.FUN

08.津軽よされ節

09.紙の舞

10.越天楽弦奏曲

11.Tears

12.獅子の風

13.Wonder

14.GOLD RUSH

15.りんご追分

16.車屋さん

17.宴

EN1.津軽じょんから節

■セットリストプレイリスト

『上妻宏光‐伝統と革新‐』SETLIST
Listen to content by 上妻宏光.

ライブ情報はこちら

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