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PhatSlimNevaeh、その全貌がファーストライブで明らかに

PhatSlimNevaeh

撮影:石原汰一

PhatSlimNevaeh(ファットスリムネヴァ)が10月17日、渋谷TSUTAYA O-Crestで初のライブを行った。PhatSlimNevaehはシンガーソングライターである藤川千愛がギターボーカルの“ロク”として突如始動させた4人組ロックバンドで、9月29日のメンバー発表から公演当日まで一か月足らず。パフォーマンスされた8曲は、ライブに先駆けてスタジオライブ動画が公開されていた「Dive」を除いてすべて未発表曲となり、このライブによってバンドの全貌がはじめて公となった。4人によるファーストライブの模様をレポートする。

シンガーソングライターとしても活動するロクを中心に結成されたロックバンド、PhatSlimNevaeh。メンバーは金子ノブアキ率いるRED ORCAで活動する同道公祐(g)、葛城京太郎(b)、そして元tricotで現在はSUGIZOらのバンドで活動するkomaki(dr)。気鋭のプレイヤーが集ったバンドがどのような音を鳴らすのか。忌野清志郎やhideといったレジェンドたちの楽曲が会場BGMとして流される中、ソールドアウトとなった渋谷TSUTAYA O-Crestのオーディエンスは4人の登場を見守った。

定刻を迎えホールの照明が落とされ、SEも無くステージにセンターに現れたのはTVイエローのレスポールジュニアを抱えたロク。「PhatSlimNevaehです」という彼女の小さな挨拶とともに、バンドがオープニング曲としてプレイしたのは「Dive」。同公演に先駆けてライブ映像が公開されていたロックンロールチューンだ。R&Bというよりもむしろリズムアンドブルース、60’sや70’sの楽曲へのオマージュ感じさせる楽曲だが、4人のプレイに懐古主義の向きは微塵もなく、ロックやファンク、パンクにJ-POPを飲み込んだPhatSlimNevaehならではのサウンドが渋谷を揺らした。2曲目「読みかけの漫画」はグルーヴィな16ビートのナンバー。曲が進むごとにバンドはジャズ、ミクスチャロックとビートを変幻するビート主体のメロ部分と、ロクの倍音豊かなボーカルが響き渡るアーバンでメロディアスなサビのコントラストは繰り返し耳にしたくなる中毒性に溢れたサウンドだ。

冒頭の2曲を終えてメンバーそれぞれが挨拶を行うと、同道のソロアルペジオから流れ込むように「ついてない」へ。ステージは夕陽に似たオレンジの照明に照らされ、曲調はセンチメンタルなギターロック。J-ROCKの王道と言える趣の楽曲だが、ファンクやブルースをルーツにした肉体性に溢れたバンドのプレイは、誰もが聴き親しんだ“邦ロック”の形式から跳躍してバンド独自の音像を刻んでいく。続くミッドチューン「フィルムカメラ」でもバンドのバイタリティある演奏はさらに加速。葛城がベースソロで観客を沸かせれば、komakiは精緻でありながらパワフルなヒットでグルーブをさらにドライブさせ、前評判に違わないライブバンドとしてのポテンシャルを4人は揺るぎなく発現していく。

前半を駆け抜けてバンドはMCへ。11月28日と12月26日の2回に渡り放送予定のWOWOWプラスでの密着ドキュメンタリーを同道が告知すると、続いてkomakiが12月22日の1stフルアルバム発売を発表。その後、MCはメンバーが揃ってからこの夜でちょうど一か月という話題に。ロクは「バンドやると宣言したものの、バンドメンバーは実際は決まっていなくて、メンバー探しに悩んで。でもこのファーストライブは最強のメンバーでこぎつけました。」とファンやバンド結成に関わった金子ノブアキへの感謝を語ると、アコースティックギターを手にして「521km」へ。遠距離恋愛を題材にしたバラードとなるこの曲は、シンガーソングライターとして数多くのドラマやアニメーション作品の主題歌を吹き込んできたロクの主戦場とも言える曲調だが、正統派のラブソングだからこそ際立ったのは4人ならではのバンドアンサンブル。J-POP的なメロディを持った楽曲であっても端正にしっとりとまとめるのではなく、むしろここまでのライブで見せた熱量をそのままに演奏するロック的なアプローチは、今後バンドがリリースしてくだろうバラード曲にも大きな期待を抱かせる。

その後、バンドはニルヴァーナへのオマージュ感じさせる“How low?”というサビのリフレインが印象的なロックチューン「おままごと」でさらにギアを上げると、テンションそのままにメランコリックなミディアムチューン「なまたまご」へ。“なんだかもう疲れたよ なんだかもう嫌になった 楽しかったから悲しくて 悲しいからそれが悔しい”、”いっそこのまま雨に溶けて消えてしまえたらいいのにな”。出口の無い思いを歌い上げるロクだったが、その歌と並んで印象的だったのは同道のギター。ブルースギタリストとして紹介されることの多い彼だが、歌詞の心象をボーカルのバックで丹念に描写する情感に溢れたプレイは、ブルースの枠を超えた新たなギターヒーローの出現を感じさせた。

「アンコールはやりません」。藤川がそう宣言した後、この夜のラストナンバーとして披露されたのが「声」。銀杏BOYZやクリープハイプを彷彿とさせるストレートなロックンロールナンバーだ。自身の音域の天井に挑む圧倒的なボーカルがフロアをこだまするが、ここでロクが歌うのもやはり出口のない思い。“生きづらいね 生きづらいね 息したいね 意味ないね”。コロナ禍がゆえか、はたまたコロナ禍で顕在しただけものか。誰しもを時として襲う虚無感や絶望。私たちは落ち込み、その度に何か明るい兆しを信じて立ち直っては、また落ち込んでいく。ロクはシンガーソングライターとしての自分に絶望したのだろうか。それは生きづらいものだったのだろうか。その答えはわからない。ステージを見つめる側にいる私たちに確かなことは一つ、彼女の傍らには無二の魅力を持った3人のプレイヤーがいるということだけだった。この夜、最後のサビで彼女は歌った。

“この日々を声にして 歌にしてみるよ あと少し もう少し”。

多くの人にとって、その歌を聴くことができるのはアルバムが発表となる12月22日となるだろう。それまで残された日々は2か月あまり。出口のないニュースに囲まれて多忙な私たちにとってPhatSlimNevaehという奇妙な名前を忘れてしまうには十分な時間だ。しかしこの記録文を読んだあなたが、もしもほんのわずかでも、彼女たちの音楽について興味を抱いたのだとしたら、このページを閉じるついでにカレンダーの12月22日に“ファスネ”の四文字を書きつけておいても無駄にはならないだろう。それがPhatSlimNevaehのファーストライブを見た者として、この文章の最後に皆さんへ伝えたいことだ。

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撮影:石原汰一

セットリスト
01. Dive
02. 読みかけの漫画
03. ついてない
04. フィルムカメラ
05. 521km
06. おままごと
07. なまたまご
08. 声


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