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店内放送で注目のメンヘラシンガーソングライター 宮城島麻未『どうせ私なんて』レコ発ワンマンライブレポート

前日に関東地方は梅雨明けし、夏本番を迎えた2021年7月17日。

東京・青山にあるライブハウス月見ル君想フでそのライブは開催された。

遡ること約1ヶ月、梅雨真っ只中の6月下旬から有線放送や全国のファミリーマート店内放送でパワープレイされていた「雨やどり」を歌う宮城島麻未のワンマンライブだ。

「傷を刻みつける痛みは生きているよと実感したい最後の希望」「私なんてきっと世界中に嫌われてる気がしてた」などなど、エッジの効いた歌詞の同曲を耳にした人もいるのではないだろうか?

そんな秘めたる内面を表出しながら苦しみを雨に比喩し、折しも梅雨とのマッチングで聴く者の心により突き刺さる作品となった「雨やどり」をリードトラックに据えたセカンドアルバム『どうせ私なんて』を6月23日に全国リリースした宮城島。

今回のライブはそのレコ発ワンマンライブというわけだ。

4度目の緊急事態宣言が発出され未だ新型コロナウイルスとの戦いにゴールが見えない中、音楽ファンの間ではロッキンの中止が大きな話題となっているが、月見ル君想フをはじめとする各地のライブハウスでも感染予防を徹底し音楽の火を消さないように努力している。

この日の宮城島のワンマンも座席数を大きく減らし、ステージと客席の距離は勿論、シートピッチもしっかりと確保されていた。

今では常識となりつつあるが、この日もライブ配信を併用しており、筆者が知る限りでここ月見ル君想フはライブハウスシーンで一二を争う配信環境を有している。

当にベストな会場でのライブに自ずと期待は高まる。

12:32、ほぼオンタイムでライブはスタート。

サポートキーボーディストの肥川成希が奏でるピアノソロから、アルバムでも1曲目を飾る「こころ」の演奏が始まる。

真っ赤なドレスに身を包んだ宮城島。

決して技巧的なシンガーではないが、彼女の内面から紡ぎ出された言葉とメロディを切々と歌うその姿と声に引き込まれ、宮城島がシンガーではなくシンガーソングライターであることを認識させられる。

また、音源では間奏にモーツァルトの「幻想曲ニ短調」が引用されたプログレッシブなアレンジが施されているが、ライブではこのセクションがクラシック曲をモチーフにした肥川の即興ピアノソロに変更されており、ライブならではのアレンジで聴かせてくれるあたりにも唸らされる。

続けざまにM-2「HOPE」へ。

静の「こころ」から動の「HOPE」へと一気にライブが動き出す。

サポートギタリストの栗田尚登が奏でるエレキギターが心地よい。

最初のMCでは「自分自身と向き合える時間にしたい」とこの日のライブに込めた思いを語る宮城島。

そしてM-3「いちばんぼし」へ。

アコースティックギターに持ち替えた栗田と肥川のピアノによるイントロからバースへ。

もしも自分が消えたらどうなるのか?そんな心情を歌ったナンバーだ。

その後「おもちゃ箱」「痕跡」とセカンドアルバム『どうせ私なんて』収録のバラードが続く。

いずれの楽曲もせつない心情を女性ならではの言葉で綴った歌詞が刺さる。

直後のMCでは「しっとりとした曲が続きましたが起きてますか?」とバラード続きのセットリストを自虐的に笑いに変える場面も。

ここで最初のゲストとして坂本淳樹を迎える。

坂本は知る人ぞ知るロックバンド“セットラウンドリー”のベーシストとして今年5月まで活動し、現在はインストゥルメンタルのソロプロジェクトをスタートさせ、EP『One Day』をリリースしたばかり。

縁あって宮城島の『どうせ私なんて』では3曲のアレンジを担当し、アレンジャーとしてのキャリアもスタートさせた。

アレンジにあたって宮城島のデモを聴き「怖かった」と語る坂本。

そんな坂本アレンジの「アナタ依存症」と「何番目?」が坂本自身の演奏を伴って披露される。

なるほど坂本が「怖かった」と評するように「アナタ依存症」では恋人に依存する狂気の沙汰とも取れる心情が歌われている。

「ちょっと待ってよ、行かないでよ、置いて行くならいっそこのまま私を殺して」「二人一緒に、いっそこのままあなたも殺して」そんな男性諸氏が身震いしそうな歌詞をキャッチーなメロディとポップな坂本アレンジが中和させている。

「何番目?」は二股(いや三股?はたまたそれ以上か…)をかけられた女性の歌。

宮城島自身がそうした経験をしたか否かは定かではないが、「私いったい何番目の女?」と自問しながら、最後には「他の女みんな消えちゃえ!」「他の女みんな消しちゃえ!」と動物的な本能すら剥き出しにした歌詞に絶大なインパクトがある。

こちらも「アナタ依存症」同様にキャッチーなメロディとポップな坂本アレンジで中和されているが、えも言われぬ絶妙なマッチングに宮城島と坂本のセンスを感じる。

MCではゲストの坂本が送り出され本サポートベーシストの竹内和孝が再びステージ上へ。

ここでアルバム『どうせ私なんて』のリードトラック「雨やどり」の話題へ。

テレビ埼玉(他10局)でオンエア中のバラエティ番組『いたくろここなのオンとオフ』のエンディングテーマに起用されていたこと、全国のファミリーマートの店内放送や有線放送でパワープレイされていたことに触れる宮城島。

同曲は宮城島が中学生の頃に書いた作品で、時を経て様々なメディアでオンエアされたことを感慨深げに語る。

そして独特なループに誘われるように「雨やどり」の演奏が始まる。

サポートドラマーの勝川和幸のアグレッシブなドラムと竹内の畝るようなベース、そこにより熱の入った宮城島のボーカルが乗り、商品音源よりもヒューマンに聴かせる。

続く「トランキライザー」は宮城島にとっては数少ない被提供楽曲。

作曲は後述のKEN asano FUJIKAWAによるもので、昨年同氏の20周年を記念してリリースされた作曲作品集『20/45』に収録された楽曲だが、今作『どうせ私なんて』にはこの日のサポートメンバーとカルテットフレスコヴェッセルの弦楽四重奏により、アルバムバージョンとしてフル生演奏で収録されている。

この日のライブはストリングスパートこそ同期だが、音源と同じメンバーによる“ホンモノ”を味わうことができた。

「トランキライザー」が終わると間髪入れずに勝川がリズムを刻む。

ここでこの日のサポートメンバーが紹介される。

それぞれがソロプレイを披露。

ミュージシャンたちのポテンシャルの高さを窺い知ることができる。

中でもクールな長身ベーシストという印象の竹内が意外にもホットにプレイする姿が印象的だった。

そのままM-10「透明人間」へ。

先ほどゲストとして登場した坂本によるアレンジ曲。

ストーカー女子の気持ちが歌われたナンバーで、これまたインパクト絶大の歌詞にキャッチーなメロディとポップなアレンジ。

なるほどアルバム『どうせ私なんて』における宮城島・坂本コンビの楽曲には一貫したコンセプトが打ち出されているようだ。

同曲終盤、客席に背を向けた宮城島が振り返って「ずっと見てるよ」とセリフを言う場面があるのだが、“怖さ”と“キュートさ”の絶妙なバランスで、こんな子にならばストーカーされてみたいとすら思わされてしまう。

M-11「あのね。」は2年前にリリースされたファーストアルバム『Love Letter』収録のアッパーなポップスだ。

ここまでのメンヘラシンガーソングライターという印象から一転、タオル片手にフロアを煽りながら歌う宮城島。

それに呼応するように会場のボルテージも上がる。

そのまま勝川がリズムを刻み続け、ここで二人目のゲストとしてKEN asano FUJIKAWAが紹介され、宮城島のグッズTシャツを着込んだFUJIKAWAが登場。

宮城島のデビューシングルからサウンドプロデュースを担うFUJIKAWA。

数々のアーティストやアイドルを手がけてきたプロデューサーという経歴から、スマートなクリエイター風のジェントルを想像しがちだが、登場するやいなやハンドクラップでステージとフロアを纏め上げてしまうスター感に意外性を感じるオーディエンスもいたことだろう。

それもそのはず。

FUJIKAWAは音楽ユニットやロックバンドのメンバーとしての経歴を持つアーティスト出身者だ。

今となっては貴重なギタリスト姿にフロアのオーディセンスは元より、ステージ上の宮城島のテンションも上がり、会場全体のボルテージは最高潮に。

そのままFUJIKAWAの提供曲でファーストアルバム『Love Letter』に収録された「Heavy Girl」へ。

ファーストにおいては数少ないメンヘラソングだが、この楽曲がセカンドの「アナタ依存症」や「透明人間」に繋がったのだと推測される歌詞の世界観。

ギターを低めに構えた激しいプレイスタイルのFUJIKAWAに呼応するかのように、サポートメンバーたちもよりアグレッシブに演奏し、宮城島の歌声にも更に熱が入る。

そのままラストナンバーとなる「サクラゴコロ」へ。

こちらもFUJIKAWAの提供作品で宮城島のデビュー曲だ。(注釈:デビュー時はmami名義)

どんなアーティストにとってもデビュー曲というのは特別なもので、この日のラストナンバーとしてセットリストに「サクラゴコロ」が組み込まれたのも、宮城島にとって特別な楽曲だからだろう。

思えばM-8「雨やどり」から6曲ノンストップで歌ってきた宮城島。

息が上がりながらも声を振り絞るその姿からは、歌唱ではなく気持ちを届けようしているように感じられ、これぞロックライブ!と高揚させられるラストスパートだ。

最後はFUJIKAWAがジャンプ一番締めて大団円。

そのまま拍手は鳴り止まず再びステージ上に姿を現す宮城島とサポートメンバーの面々。

アンコール曲はファーストのリードトラック「Love Letter」。

宮城島にとって初のタイアップ作品となった同曲は恐らく宮城島自身にとって、また予てより彼女を応援してきたファンにとって思い入れのある楽曲だろう。

セカンドの収録曲のような鋭いエッジはないものの、彼女自身の人間味溢れる強さと弱さが叙情的に表現された秀作だ。

本編クライマックスでヒートアップした空気を落ち着かせるように、穏やかなアンコールでこの日のライブに幕を下ろした。

ライブ後、宮城島麻未はこう語る。

これまで自分の価値を必死に探していて、かと言って歌が上手いわけでもないし若いわけでもなく、ずっと自信を持てずにいました。

そんな時にいつも抱いていた「どうせ私なんて」という感情をそのままアルバムタイトルにして、負の感情をさらけ出した楽曲ばかりを収録したら、「グサっと刺さった」「鳥肌が立った」というコメントが沢山届いて、私の居場所は作品の中にあるのかもしれないと思えるようになりました。

今回のワンマンも今までよりほんの少しだけ自信を持って臨めたように思います。

ずっとネガティブ思考だった人間なのでそう簡単に変われませんが、私がさらけ出すことで誰かが「自分だけじゃない」と思ってくれたら嬉しいので、これからもさらけ出していきたいと思います。

あと、私は次の予定がないと不安になってしまう性格なので、近々アコースティックの配信ライブもやりたいと思います。

リスナーさんと心の荷物を分けあって、私のライブに参加するとその荷物が少し軽くなったと思ってもらえるような配信ライブにできたらいいなと思っています。

近々詳細が発表されるであろう配信ライブに期待しつつ、今後の彼女の活動に注目したい。

文:伊藤貫太
撮影:能地薫・尾崎麻穂

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