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ポップしなないで、「神頼みツアー」ファイナルワンマンライブレポが到着!

ポップしなないで

Photo By Kazma Kobayashi

2020年11月にファーストフルアルバム「上々」をリリースした、2人組ポップバンド「ポップしなないで」。2021年3月には森永製菓株式会社「チョコボール」の『飛びたいキョロちゃん缶』と人気アーティストグループ「BiSH」のリンリンのコラボ曲「遠クエ」の作詞・作曲を担当するなど、各メディアで大きな活躍ぶりを見せているが、そんな2人のレコ発ツアーファイナルとなるワンマンライブが、神田明神ホールで開催された。

大阪、名古屋とライブハウスを回った彼らが、東京のワンマンライブの会場に選んだのはなんと神田明神ホール。その名の通り、神田明神の鳥居をくぐった中にあるホールである。

桜が咲き始め、日が差し込むホールに足を踏み入れる。少し厳かな気持ちでフロアに入ると、ソーシャルディスタンスを保った座席、そしてステージ上には大きなスクリーンに映る焚き火の映像。フロアでは火が焚ける音とミュートされたドラムの音が鳴り続け、何かを仕掛け続ける彼ららしい雰囲気づくりが行われていた。

客電が消え、かめがいあやこ(vo/key)が入場すると、大きな拍手が起こり、静まり返る中でピアノの独奏が始まった瞬間、会場中の観客がその姿に引き込まれた。

スクリーンにはVJによる焚き火から夜空に浮き上がる映像、曲名も知らないピアノインスト曲の神々しさは、ポップしなないでのライブを楽しみにしていた観客の感情を大きく揺さぶるもので、彼女がどれだけこのライブに想いを込めているかが表されているようだった。

最後の一音の残響の中、ストロボが焚かれ、ノイズが響き渡る。その中でかわむら(dr)が入場し、一礼。ノイズの中からピアノとドラムが差し込み、「We are ポップしなないで」の一言で「ヤンキーラブ」の演奏が始まった。シーケンスを使い彼らが思い描いた通りの音の実現と、バンドのダイナミズムは、古くからある曲を最新の彼らの音楽にアップデートしていた。

曲が終わると間髪いれず、かめがいが「神田明神ホール、よろしくお願いします!」と大きく声を出し、「フルーツサンドとポテサラ」が始まる。彼らが2人で作り上げてきた「ピアノとドラム、そして歌」という音楽そのものと言えるポップソングで、彼らのライブが始まったと改めて実感した。

実は冒頭、かめがいのピアノインストの際に地震が発生。演奏を一時中断し、最初から仕切り直すというハプニングがあったのだが、MCではそれを茶化しながらも、「何かあれば必ず中断するし、体調が悪くなった人は手をあげてください」と飄々という彼らのMCは、誰かを救ってやろうという彼らの音楽に対するスタンスと似ているもので、とてもポップしなないでらしい落ち着きが感じられた。

その後、アルバム発売後に作った「でも暮らし」、淡々とした曲調からエモーショナルに変化する「オシマイノリティ」、心を掴まれるミドルチューン「SG」が立て続けに演奏され、彼らがこのライブ、そして音楽にかけた想いを堪能できた。

ここでサポートギター・山内かなえ、サポートベース・カワノアキが参加し、かわむらが「神バンド」と称する編成になり、かめがいの口上から「前頭葉」が始まる。サポートメンバーによるダイナミックでありながらも繊細なアレンジと演奏により、ポップしなないでの音楽に新しい解釈が吹き込まれた。続くアルバムの名チルチューン「UFO surf」では、会場中がバンドを贅沢に使った空間に酔いしれた。

サポートメンバーを一旦送り出しながら「Life is walking」のイントロで、見事に2人だけの音楽にシフトすると、一番の定番曲とも言える「魔法使いのマキちゃん」、そして「救われ升」で会場の熱気が一気に上がる。手拍子のほか、手を上げる人がいたり、コロナウイルスによって変えられたライブ鑑賞スタイルの中でも、ステージに想いを伝える術を観客が持っていることが感じられた。

ここでようやく落ち着いたMCが入る。気迫の籠もった演奏とは少し空気の違う、いつも通りの2人の掛け合いの中で、リラックスしながらもライブを楽しんでいる様子が見て取れた。

「コロナについてはみんな知ってるし何もいう必要がない。前向きに生きなければいけないなら、我々はその手助けをするだけ」と同じ調子で急に芯を突いたことを呟き、何気なく始まった「言うとおり、神さま」。イントロからVJによってスクリーンに映し出される映像と共に、祈りにも似たかめがいの語り口調は、観客にとって心臓を鷲掴みにするような覚悟を突きつけられたかもしれない。

その後、同じく創作する人間にとってのアンセムとなる「Creation」で切実なかめがいの叫びが響き、ポップしなないでを面白がりながらも真摯な音楽性に惹かれるファンの中には、涙を浮かべる人もいた。

ここで再びサポートメンバーの2人が入り、この日初披露の新曲「支離滅裂に愛し愛されようじゃないか」が始まる。小気味良いかめがいの語りからダンサブルなサウンド、ブラスが響き渡るエッジの効いたポップさ、そしてかめがいとかわむらによる「僕らはやっぱり支離滅裂に愛し愛されようじゃないか」と繰り返される言葉。まさに今後ポップしなないでのどこか破滅的な前向きさを体現し、更なる躍進を狙うためのキラーチューンになることは間違い無く、会場中も初めて聞いた新曲に体を揺らしていた。

曲が終わるとかめがいが爪弾く中でかわむらが「人を好きになる、嫌いになる、死にたくなるなんて感情は季節と紐づけられることが多い。それが音楽を作る上で我々にとって夏であることが多いということ。今年の夏が、たとえ死にたくなる中でも、ひとつでも前向きな気持ちが芽生えるようにと想いを込めて、夢見るような夏の夜の歌を」と始まった「夢見る熱帯夜」では、スクリーンにMVが映し出され、会場中がどうしようもなく心地よい夏の妄想に取り憑かれた。

かめがいが「今日は本当にありがとうございました。私にとってポップしなないでは、人生の真ん中で、それを皆さんの人生の一部にしてくれているってことは、こうして見に来てくれている皆さんも自分の人生の真ん中にいます。」と語り始め、「すごく楽しみにしていたこの会場で皆さんに会えることは本当に特別で、こんなに幸せなことはないと思います。皆さんの顔を見たら生きててまじで良かったと思いました。この時間が終わるのは寂しいですが、明日から皆さんが喜ぶものを作っていきます。では、この曲で締め括ろうと思います」と、どこか他人事な夏の事情を歌う「2人のサマー」が始まる。シューゲイザーを思わせるギターと、ポップしなないで2人の歌声、そしてスクリーンに映し出されるどこかだれかの夏の光景が、このワンマンライブの最後の曲にふさわしいことを確信させられた。

曲の終盤、サポートメンバーが一人一人退場し、かわむらも一礼をして退場する。かめがいが1人残される。曲が終わり、朝日がサイコロに変わる彼ららしい夜明けと共に「言うとおり、神さま」のイントロが演奏され、かめがいが深く一礼をして拍手が止まない会場を後にした。

その後アンコールに答え、さっきのエモーショナルな演奏とはなんだったのかというほど戯けてステージに戻ってくる2人。物販の宣伝のために戻ってきたと言うが、これは2人なりの照れ隠しなのだろう。

「色々心配することもあるだろうけど、今年もポップしなないではやります。めちゃくちゃやります」と宣言すると、ファンは声をあげずに喜び、初期の名曲「エレ樫」、そしてそれに続けてダンスナンバー「丑三キャットウォーク」でワンマンライブを見事に締めた。

全体を通じて、なにより楽しそうに、そして時には覚悟と気迫をこめて演奏する2人の様子と、ホールの音響でも負けないシーケンスやサポートメンバーをうまく取り込んでいたのが印象的であり、ポップしなないでの音楽への挑戦に対する覚悟が感じられた。

また、焚き火から始まり、朝日で終わるという演出もかなり印象的で、言ってしまえば「音楽だけでは留まらない」表現に足を踏み入れているということなのだろう。

今後更なる大きな会場でも活躍する2人の様子が期待できるライブだったといえる。今年も彼らの動向から目を離せないだろう。

■ポップしなないで レコ発ツアー「神頼みツアー」

2021年3月20日(土)at.東京・神田明神ホール

<セットリスト>

【神田明神ホールワンマンセトリ】

1. ヤンキーラブ

2. フルーツサンドとポテサラ

- MC -

3. でも暮らし

4. オシマイノリティ

5. SG

- MC -

6. 前頭葉

7. UFO surf

8. Life is walking

9. マキちゃん

10. 救われ升

- MC -

11. 言うとおり、神さま

12. Creation

- MC -

13. 支離滅裂に愛し愛されようじゃないか

14. 夢見る熱帯夜

- MC -

15. 2人のサマー

- MC -

EN1. エレ樫

EN2. 丑三キャットウォーク


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